お世話になっております、高見沢です。
あい
高見沢
奢らず謙虚に仕事がんばろう!って思って、ビジネスマンらしい書き出しにしてみたヨッ★
あい
あ、申し遅れました。
「たかみー」こと高見沢と申します。
ふだんは、WiMAXをはじめインターネットにまつわるお役立ち情報を発信しているこのサイト。
本日は、2月18日より日本で配信がスタートしたNetflixのオリジナルドキュメンタリー「FYRE 夢に終わった史上最高のパーティー」をレビューしたいと思います!
参考 FYRE 夢に終わった史上最高のパーティーNetflix高見沢
あい
ドキュメンタリーなので(さんざんニュースにもなった事件なので)ネタバレありのレビューです!ご容赦のほど!
余談ですが、Netflixのライバルであるhuluも「Fyre Festival」のドキュメンタリーを制作し、まもなく配信されるそう。ぜひネトフリ版と見比べたい!(2019年1月現在)
FYRE 夢に終わった史上最高のパーティーのあらすじ
みなさんは、「Fyre Festival」ってご存知ですか?
2017年4月から5月の2週間にかけて、バハマの離島で開催される“はずだった”音楽フェスです。
Netflixでの紹介文には
オシャレな私有島に集う豪華なフェスとして派手に売り出されたFYRE(ファイア)は、ある実業家の思い上がりとずさんな運営により未曾有の惨事に終わる。
とあり、結論から言うとフェスそのものは中止にはなったんですが、そのタイミングがまさかの島に客が集まったあと。
食べ物も飲み物も、寝る場所も帰りの飛行機もない状態で知らない離島に放り出された数百人のゲストが暴徒化し、まさに大惨事となったわけです。
あい
そしてそんな状況をつくったのがこのひと。
ビリー・マクファーランド。
Fyre Festivalの発起人であり、この物語の主人公です。
貫禄たっぷりですが、この写真が撮られた2017年時点で25歳。
ニュージャージー州出身の彼は大学を1年生でドロップアウトし、その後ニューヨークに移り住むと起業家としての頭角を現します。
彼がまず最初に手がけたのは、ステンレス製のクレジットカードを発行する会社。
プラスチックカードより見た目がクール!という理由で、ニューヨーカーでちょっとした人気を得ます。
あい
それを足がかりに会員制アプリをオープンし、コンシェルジュサービスならびにイベント事業をスタート。
メンバー制のクラブハウスをつくり、そこでのVIP待遇や高級レストランへの招待といったサービスで多数のファンを獲得していきました。
そうしたなか、クラブ出演の依頼を通じて仲良くなったのが、 90年代に人気ラッパーとして活躍したジャ・ルール。
ビリーとジャのふたりは、アーティストと、アーティストを呼びたいひとをマッチングさせるサービス「FYRE」を立ち上げます。
で、このスタートアップをもっと盛り上げるためのアイデアある?と聞かれたスタッフがこんなひとことを・・・
このスタッフ的には「あなたクラブ持ってるしちょうどいいのでは?」くらいのノリだったみたいなんですが、目立ちたがりのビリーの脳内では「それだわ!フェスだわ!」と、なり。
唐突にバハマに島を買い。
フェスを開くことにしました!
高見沢
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宣伝が超バズって高額チケット完売
フェスが発表されたのは2016年12月。開催は2017年の4月です。
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このフェスを盛り上げるため、ビリーとジャはスーパーモデルやインフルエンサーを宣伝に使うことにしました。
名だたるスーパーモデルを島に招待し、CMを制作。
そして彼女たちはあたかもプライベートで遊びにいったかのように島の様子をInstagramに投稿したのです。
すると、またたく間に「ファイアフェスティバル」はホットキーワードに。
16万~132万円という高額チケットにも関わらず、話題が話題を呼び発売日だけで95%を販売!
高見沢
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販売されたチケットは、フェス入場料のほか、VIPルームに招かれる権利や海辺の豪華テントに滞在できるチケットなど。
一番高額な2700万のチケットは、ヨットとシェフがついてくるパッケージでした。
さて。
チケットは完売したものの、問題山積です。
フェス開催まで5ヵ月を切っているのに、アーティストの手配、会場の設計、電源の確保、トイレの計画、飲食物の手配、宿の手配、なにもできていない!
あい
無計画に次ぐ無計画で迎えた当日
ぜんぶ説明してるとキリがないので、ファイアフェスティバル開催までのトラブル(ごく一部)をピックアップしてみましたッ
- ビリーの不用意なひとことによって島の管理者が激怒し、別の島に変更
- ビリーが、予算がないから豪華なテントは無理!と言ったため、難民用テントに
- 開催の2週間前にビリーがケータリング会社とケンカ。違うケータリングを探すべくスタッフが奔走
- アメリカから大量のエビアン(飲料水)を運んだものの関税が払えず、ビリーがゲイのスタッフに「関税職員にカラダを売れ」と強要(未遂)
高見沢
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そんなこんなでイベントの45日前には現場スタッフが半数以上入れ替わるという大混乱の中、中止にすべきだとの内外部の声を無視し、ついに当日を迎えてしまいます。
あい
そして当日の朝、まさかのスコール!
会場の設営は完成せず、テントは崩れ、ベッドは水浸しに。
最悪のコンディションの中、朝6時、300人以上もの参加者が島に到着しました。
空港からバスで海辺のレストランに連れていかれた参加者たち。
最初は楽しんでいたものの、あまりに放置されっぱなしなので「様子がおかしいぞ?」とざわつきはじめます。
なんとか数時間遅れでテントエリアに到着しましたが、想像とはあまりに違う眼の前の状況にあちこちで悲鳴が上がり、本部は参加者をさばききれず大混乱。
そのうち、チケットの有無に関わらずテントは争奪戦に。
さらに、空港からトラックで運ばれたバッグにはタグが付いておらず、誰の荷物かわからない状態。
腹を立てた参加者があちこちで破壊活動を始めます。
`
あい
参加者たちは次々とツイッターでファイアフェスティバルの現状を発信。
ファイアフェスティバルは数時間のうちに大炎上に陥り、翌日、正式に中止の発表がされました。
ビリーは雲隠れし、一ヶ月以上もギャラが未払いとなっていた現地スタッフは大激怒。
高見沢
ちなみに運営スタッフたちもギャラをほとんどもらっていないうえ、ビリーにクレジットカードを貸して10万ドル以上使われたスタッフもたくさんいるそうです。(もちろん戻ってきてない)
それでもビリーはあきらめない
ファイアフェスティバルの失敗は大きなニュースとなり、参加者が次々と訴訟を起こしました。
さらに、ビリーが投資家をダマして資金を調達していたことも判明。詐欺罪に問われ、収監されることに。
が、30万ドルを支払って保釈。
あい
そして、ファイアフェスティバルの騒動から半年後の12月。
フェスチケット購入者のアドレスに、人気アーティストのコンサートや世界的イベントのVIPチケットを特別に購入できる権利を買わないかというメールが届き始めます。
あい
高見沢
こんな怪しいメールにも引っかかるひとはいたそうで、ビリーはこの手口で150万ドルを集めることに成功しました。
しかしずっと見張っていたFBIがその動きを見逃すわけがなく、ビリーは再逮捕。
詐欺、資金洗浄、なりすまし、証人脅迫、司法妨害の5つの罪で起訴され、2018年10月に、禁錮6年の実刑判決を受けています。
あい
ファイアフェスを機にSNSでのPR規制が強化された
「調子に乗った起業家がやらかした」
というレベルをはるかに超える大惨事となったファイアフェスティバル。
そもそも人を集められなければここまで大規模なはなしにはならなかったわけで、インフルエンサーを巻き込んだPRが大成功したからこそ始まった悲劇とも言えます。
あい
ファイアフェスティバルの全容が明らかとなるにつれ、世間は、宣伝に関わったインフルエンサーにも批判の目を向け始めます。
これをきっかけに、インフルエンサーが自身のSNSやウェブサイトで宣伝をおこなう際には「#PR」のハッシュタグをつけるなど、広告であることを明確にするとのルールができました。
ファイアフェスティバルが繰り返し発信していたのは、美しい海と豪華クルーザー、スーパーモデルたち。
チケットの発売時点で、出演アーティストは一切決まっていませんでした。
それでもチケットが完売した理由は、アーティストが目的ではなく、SNSにアップされたセレブリティな空間を自分も体験してみたいと思わせることに成功したからです。
じゃあビリーだけが悪いのか
「FYRE 夢に終わった史上最高のパーティー」は主に、ファイアフェスティバルの記録用にずっと撮影されていた動画と、Netflixが新たに撮った関係者へのインタビューで構成されています。
社内スタッフ、外部スタッフ、投資家、参加者、島の住民etc…
みんなビリーに夢を見た
あるスタッフは言いました。
この化け物を作り出してしまった。
誰が?みんなが。
もちろん、ビリーの自己愛と奢りがひどすぎたという大前提はありつつも。
最初はみんな、自分にプラスになると思ったからビリーに乗っかったというのは紛れもない事実。
- ジャ・ルール:ミレニアル世代の注目起業家とビジネスを成功させる自分、超クール。
- スタッフ:イケテル案件に関われる自分、超クール。
- 参加者:イケてるイベントに参加する自分、超クール。
- 島の住民:使い道のない場所を提供して金が入ってくる、超クール。
みんな、ビリーと仕事をすることが、このフェスに関わることが、特になると踏んだ。
そしてそれは、周囲にそう思わせる人間的魅力をビリーが持っていたから。
じゃなかったらニューヨークで一度でも成功しないです。しかも25歳で。
うさんくさくてもなんでも、多数を相手に堂々と自分を売れるのは才能です。
世の中にはいろんなすごいひとの成功体験があふれているけど、そのスタートの多くは「いやそれぜったい無理でしょ」ってことだったりする。
無理でしょって場所に率先して足を掛けられるひとは注目されるし、尊敬されるし、バカにもされる。
でもそれができるのが、先駆者とかカリスマとか言われる種類のひとたちなわけで。
カリスマに惹かれて、先駆者の仲間になりたくて。
ビリーに集まってきたひとたちは、一緒に大きな夢を見た。
でも、見ている先が大きいほど、すぐここにある足元は見えづらかったりする。
世に転がってる成功例の中には、ファイアフェスティバルのようなひどい内情で、それでもいろんな幸運が重なって成功できたものも少なくありません。
だから、何かが少しでも違っていたら、いろんな奇跡が起きて、ファイアフェスが大成功する未来もあったかもしれない、なんてことも思ってしまうのです。
高見沢
あい
とはいえ虚像なんだけど
とはいえ、ビリーがもっとも優れていることってなんだろうと考えると、虚像をつくるセンスがすごいってことなのかな、と思います。
途中で何度も、スタッフが「まじでやばいから中止にしよう」と進言したものの、頑なに無視し続けたビリー。
高見沢
先ほども紹介したように、このドキュメンタリーにはファイアフェスティバルの準備を撮影した動画が使われているんですが、なぜそんな動画が残ってたかというとビリーが「1分1秒全部撮影しろ」と指示したから。
ビリーはまじで、失敗するなんてぜんぜん思ってなかったと思うんですよね。
あの!歴史的イベントの!第一回の舞台裏!みたいなドキュメンタリーを作り、さらにもっと名を挙げるまでがビリーの計画だったのでは、と。
ギリギリになってもなお、心の底から成功者のイメージしかなかったんだろうな、なんてことを想像してしまいます。
あい
高見沢
あい
人々の承認欲求をあぶりだしたドキュメント
「ファイアはインスタの実現だった」
参加するはずだったアーティストのひとこと。この言葉がすべてを物語っているような気がします。
承認欲求はモチベーションのひとつになり得るけど、「それ」が目的になってしまうと何も生み出さなくなってしまうという、皮肉。
とっても現代っぽいドキュメンタリー。
これってレベルの差はあれど、どこにでもあるはなしだと思います。
自分をよく見せたい。ひとよりも優れていると思われたい。
負け犬たちに夢を売る。
ビジネスのために。自分の、相手の、承認欲求を満たすために。
インターネットの世界でもリアル世界でも、似たことを商売にしてるひとはたくさんいます。
高見沢
あい
高見沢
最後に
Netflixオリジナル作品である「FYRE 夢に終わった史上最高のパーティー」。
結末がわかっていてもドキドキさせるつくりはさすがでした。
インターネット全盛の現代。
なにが虚像でなにが真実なのか。果たして自分が試される場面は、案外すぐ近くにありそうです。
高見沢